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左手に告げることなかれ

 人類、右利きが多いことからしても右手はよく働いてくれているものだと思っている。しかし、それに引けを取らないくらい左手もよく働いているのではないかと、最近思うに至っている。それは左手にした結婚指輪がよく傷つくことからしてそう思う。右手が主たる働き、つまり、ものを書いている、掴んでいる、などしている時に、左手もものを押さえていたり、探していたり、何かしら働いている。そしてその時に左手はあちらこちらにぶつかっている。それは思いもよらぬ時と場所と状況で起きている。ぶつけようと思っているはずはなく、またぶつかるとも思っていないにもかかわらず、よく左手はものにぶつかっている。気づいた時にはすでに金属音が響いている。ガリッ、シュッ、コツン、ギィ。慌てて左手を引いたり、動かしたりすると、また違うところにぶつけることもある。こうして僕の結婚指輪は誓いの言葉を交わした日から2ヶ月の間に数あまたの傷がつくことになった。思えば誓ったその日から傷はついた。新しく、輝いた指輪の光が曇らぬように、傷つかぬようにと気をつけていたにもかかわらず、容赦なく難は降りかかった。これは神の仕業なのか、また別の何者かが右手の働き振りを左手に告げたからなのかはわからない。幸い、指輪を購入した店は俄かについた傷を含めて、一度限り無料で磨きをかけてくれる。そのサービスを受けるかどうかはまだわからない。一つ一つの傷が生活の証であり、歴史であり、二人の絆を意味しているようで、その傷や輝きのくすみをきれいにすることがよいことなのかどうか。やはり貴金属は輝きなのだろうか。そうは言っても元々、貴金属の価値は人が決めたもの。輝いていようが、傷ついていようが、人それぞれというところか。しかし、見た目に囚われる世の流れとしてダイヤモンドのように傷つかず、輝いていることが望まれる傾向があるように思う。ならば、新婚の皆さん、右手がよく働くほどに、左手をぶつけることなかれ。さらば、指輪は傷つかぬ。

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